
お店のレジで支払いをするときや、イベントの受付、レストランでメニューを見るときなど、私たちは毎日のように「QRコード」を使っていますよね。
雨粒がついて少しにじんでいたり、紙の端がくしゃっと折れていたりしても、スマートフォンのカメラをかざすと一瞬で「ピピッ」と読み取れて驚いたことはありませんか。バーコードだと少し擦れるだけで読み取れなくなってしまうのに、どうしてQRコードは平気なのでしょうか。
その秘密は、コードの隅にある「3つの大きな四角」と、数学の知恵を使った「誤り訂正」という仕組みに隠されています。
斜めからでも一瞬で認識できる「3つの四角」の秘密
QRコードをじっくり見てみると、四隅のうち3つの角に、目玉のような二重の四角いマークがあることに気づきます。これは「切り出しシンボル(ファインダパターン)」と呼ばれる、とても重要な目印です。
この3つの四角には、白と黒の幅が「1対1対3対1対1」という特別な比率で作られているという特徴があります。実はこの比率は、世界中の印刷物や自然界の模様を調べ尽くした結果、日常の中で「もっとも現れにくい比率」として導き出されたものです。
スマートフォンなどのカメラは、画面の中からこの「1:1:3:1:1」の並びを探すことで、一瞬で「ここにQRコードがある」と見つけ出すことができます。
さらに、四角が4つではなく「3つ」だけ配置されているのも大きなポイントです。3つの位置関係がわかれば、コードが上下左右どの向きを向いているのか、どれくらい斜めに傾いているのかを瞬時に計算できます。私たちがカメラを逆さまに向けたり、斜めからかざしたりしても迷わず読み取れるのは、この3つの四角のおかげなのです。

汚れや破れを自動で直す「誤り訂正」の知恵
もうひとつの大きな謎が、「なぜ汚れていても正確に読めるのか」ということです。
QRコードの中には、WebサイトのURLなどの本来のデータだけでなく、あらかじめ「誤り訂正コード」と呼ばれる復元用のデータが一緒に埋め込まれています。これには「リード・ソロモン符号」という高度な数学の計算方式が使われています。
たとえるなら、全体のデータをパズルのように編み込んでおき、「どこか一部のピースが欠けても、残りのピースの形から欠けた部分を逆算して元通りに復元できる」ような仕組みです。
この誤り訂正の強さには段階があり、もっとも高いレベルに設定すると、コード全体のなんと約30%が汚れたり破損したりして見えなくなっても、正しく元の情報を読み取ることができます。
街中で、中央にイラストや企業のロゴマークがドンと描かれているQRコードを見かけたことはありませんか。あれもデザインの都合でコードの真ん中をわざと隠しているのですが、誤り訂正機能が欠けた部分を自動で補ってくれているからこそ、問題なく読み取れるのです。
実は日本生まれのオープンな技術
今や世界中で当たり前に使われているQRコードですが、実は1994年に日本の自動車部品メーカー「デンソー(現デンソーウェーブ)」の開発チームが生み出した技術です。
当時、工場の部品管理で使われていた従来のバーコードは情報量が少なく、作業員の方が何十個ものバーコードを何度も読み取らなければならず、大変な負担になっていました。そこで「もっとたくさんの情報を一度に、どの方向からでも素早く読み取れるコードを作ろう」と開発されたのが、この小さな正方形の世界だったのです。
開発チームが特許の権利を行使せず、世界中のみんなが自由に使えるようにオープンにしたことで、QRコードは世界中で広く普及することになりました。
おわりに
普段何気なくスマートフォンのカメラをかざしている白と黒の小さな四角形。その中には、どの向きからでも瞬時に捉えるための比率の工夫や、少しくらいの傷や汚れなら自力で直してしまう数学の知恵が、ぎゅっと詰め込まれていました。
次に街でQRコードを見かけたら、四隅にある3つの四角や、中央に隠された工夫をそっと観察してみてくださいね。
